ある通信兵のおはなし

胴体着陸(2)

平成16年6月18日配信
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 G軍曹機とは概ね、座標○○地点で遭遇することが予想されました。

 T曹長が考えているのは、九十九里浜に胴体着陸をさせることらしいです。
 九十九里浜は、北は飯岡の行部岬から南は大東岬まで、全長約66Kmの弓 状の海岸線で、日本一の規模の浜です。

 隊長とG軍曹の交信を聞いていますと、軍曹は片足着陸はこれまでも経験しており自信があるので、片足での着陸を強調していました。

 隊長。
 「整備された飛行場での経験は通用しない。これから九十九里浜の砂地に着陸するのだ。機は壊れても代わりはあるが、貴様たちの代わりはない。今後T曹長の指示に従うように」

 「貴様たちの代わりがない」と言われたことが身にこたえたのか、G軍曹は「申し訳ありません。曹長の指示に従います」と、豪放ないつもの軍曹らしからぬ返答をしていました。

 ところで、九十九里浜への着陸のことはそのとき初めて聞きました。
 私たちが支援に向かうときから既に、隊長は曹長の意図することを推量していたようです。先読みに優れていたのです。

 軍曹は九十九里浜のことを詳細にわたっては知りませんでしたので、T曹長に援護を命じたわけです。

 通信室長に対して。
 「胴着の予定地、座標○○、着陸の際、出火の怖れがあるので、付近を管轄する警察に約1500mの間は人が近寄らないように警戒を頼む。と連絡されたい」と言いますと、さすがに我が隊は連携プレ−が行き届いていました。

 通信室長。
 「既に着陸地点を予想し連絡済みである。付近の在郷軍人の人々が手配を完了している。なお、着陸後に機を隠すため、莚(むしろ、藁で作ったもので、一枚は畳一枚ぐらいのもの)を準備している」

 僅かな時間の間に準備万端が整えられたいたことには、全く驚きでした。

 G軍曹機が見えました、

 T曹長。
 「これより道案内をする。
幸いにも今は引潮どきだ。浜の黒い部分は波に洗われて比較的に平坦であるから、その位置を目標とせよ。

速度250、降下角度3度で降下し、着地前に仰角10度として速度を落とし、速度が150以下になったところで静かに降ろせ。

万一、出火しても海水が消してくれるような位置に降ろせ」

 曹長の考え方には「なるほど」と感心しました。

 目的地が見えました。
 長い竿に白い大きな布をくくりつけたのを、一人の人が振っています。
『安全だから着陸OK』のサインです。

 まず、私たちの機が超低空で飛行してさらに安全を確認するとともに、海岸の皆様へ翼を2、3度振って挨拶をしました。

 多勢の人々です。
 事前に連絡していなければ危ないところでした。

 G軍曹はさすがベテランでした。
 胴体着陸のスム−ズなこと。海水の抵抗により速度を落とす効果もあったのでしょうか。
 
 それにつけても、この機は先のN軍曹のときと同じでよく災難に遭遇します。
 が、この程度の胴着ですと衝撃は少ないでしょうから、機の構造の軸は狂っていないと思われます。

 翌早朝、G軍曹とS上等兵が帰還しました。
 
 九十九里の名物である鰯料理をご馳走になったそうですが、二人の土産はピチピチの鰯がワンサカでした。

 炊事班に頼んで、鰯のにぎり寿司を作ってもらい、皆でいただきました。
 任務をやり遂げたあとの満足感を充分に味わいました。


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