操縦士の補充平成16年4月23日配信 |
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陸軍病院に入院中のN軍曹(第71話、「空間識失調」で負傷した百式司偵の操縦士)ですが、前頭部の傷は縫合の結果ほぼ全治したようです。しかし、両方の瞼の肉が殆んどはがれているため整形手術が必要で、完治までには相当日数がかかるとのことでした。
従って、搭乗員の補充が急務となりました。 しかし、当時は錬度の高い操縦士は本土防衛のために温存しなければならないために、司令部も困惑していた様子でした。 隊長からT曹長に対し「名案はないか」との諮問があり、T曹長の後輩で屠竜戦闘機の操縦士で、B29の夜間迎撃に奮闘していたG軍曹の名が浮かびあがりました。 G軍曹はこれまで、B29を東京上空で3機撃墜、2機大破させた猛者でしたが、東京湾の上空でB29を撃墜した直後、グラマン戦闘機の攻撃により右大腿部を撃たれ、機は火災発生により墜落。 軍曹は落下傘で降下し救助艇に救助されましたが、大腿部を複雑骨折したため、金属(金)で固定し長期入院していたようです。 「退院後は地上勤務となり憤懣やるかたない毎日を送っている」と、T曹長宛に手紙が届いていたらしいのです。 そのことをT曹長が隊長に話したところ。 「B29と渡りあった歴戦の猛者であれば、申し分ないと考える。T曹長が推薦するのであれば司令部と交渉する」とのことでした。 3日後、G軍曹が転属してきました。 最初に隊長から言われたことは、「本官に命を預けよ」だったそうです。 暫くの間操縦をしていないため、隊長命により慣熟飛行をすることとなり、 私たちの機の後部座席にT曹長が乗り、G軍曹の訓練をすることになりました。 曹長が出発前に、「約1〜2時間で帰投するから夕食を一緒にとろう。そのときN軍曹機の通信兵を引きあわせるから伝えておくよう。米軍機の来襲があれば即、通報するように」と私に告げ、離陸して行きました。 いつもながらの配慮に感服しました。 私は通信室で待機していましたが、G軍曹に合ったときB29のことを詳しく お尋ねしたいと考えていました。 約1時間が経過したとき、「帰投途中でP38に遭遇空戦中。1機を撃墜したがもう一機が曲者で、なかなか離脱しない」と曹長から緊急通報が入りました。 今日は朝から警報は出ていなかった筈なのに、何処から侵入してきたのかわかりません。 「後20kmで基地上空。基地の存在を確認させないために絶対に撃墜する必要がある。我が機は急降下ののち急上昇するから、我が機を狙ってカリカリしている敵機が急降下するところを高角砲の斉射をするよう、射手に伝えよ」と、早口でしたが落ち着いた口調で曹長が通報してきました。 早速、通信室長から隊長に報告。私は対空射撃班にこのことを告げに走りました。 T曹長機が見えます。 その後方約1kmをP38が追撃しています。 仲間の一機が撃墜された様子を目撃しているせいか、それ以上は接近しないようです。 そのうち、曹長の機が一旦急上昇し、目視で5000位の高度から一気に急降下しました。 P38も同じように追尾しています。 曹長機が急降下ののち高度1000位まで急上昇。 敵機も急降下し後を追撃していました。 曹長機が急上昇するのを見て敵機が上昇姿勢に入り、目標の敵機が一番大きく見えた瞬間、二連装の高角砲が二門と、12.7mm機銃三門が一斉に射撃。 敵機は曹長機のことで頭が一杯で、地上から攻撃されると予想していなかったのでしょうか。 双胴の一方の胴体の片方から炎が上がったと思った瞬間、空中で爆発し、林の向こうへ消えました。 それを見届けて曹長が着陸してきました。 第一声が。 「送り狼を連れてきて、すまん」でした。 滑走路はセメント舗装ではなく、偽装するため、土を固めて芝生を植えていましたから、敵機は飛行場であることを認識しておらず、対空砲火に合うとは思ってもいなかったようです。 それにしても、慣熟飛行で一機撃墜とは腕前の確かさが立証されました。 G軍曹が乗っていた「屠竜」は、夜間戦闘機型の丁型.キ45改.ハ102。 武装は、37mm機関砲×1 20mm機関砲×3 7.9mm機銃×1 250Kg爆弾×2 と物凄い装備でB29とも互角に戦える重戦闘機でした。 B29の外観は知っていましたが、「10,000mの上空を飛ぶ爆撃機の内部の様子を知りたい」と常々思っていましたので、時間を見つけてG軍曹に知りたかったことを聞きました。 さすがB29迎撃専門の戦闘機乗りだけのことがあり、詳しく研究をしておられました。 その装備の堅固さと技術力の素晴らしさには圧倒されました。 主要諸元は。 全幅:43.10m 全長:30.18m 全高:8.46m エンジン:ライト社R-3350空冷星型、複列18気筒排気タ−ビン過給式2,200馬力×4基 最大時速:550km 航続距離:5230km 実用上昇限度:10,250m 武装:12.7mm機銃×10〜16 爆弾搭載量:9100kg(最大) 乗員:11名 燃料系統は、エンジン毎に分割して供給するようになっており、左翼の第一・第二エンジンのタンクは左主翼の中に、第三・第四エンジンのタンクは、右主翼に、それぞれ別個のタンクに満載しているほか、前後の爆弾倉にも予備燃料を搭載していたそうです。 総量35,000リッタ−のガソリンを搭載し、10時間の飛行が可能でしたが、主翼に「屠竜」の37mm機関砲の弾が一発当たればたちまち火達磨になったそうです。 G軍曹の戦法は、主翼の真下に接近して機関砲を斉射し離脱する方法だったらしいのですが、「真下に潜り込むためには機銃掃射をかわさなければならないので、誰もができる戦法ではなかった」と語ってくれました。 その他、当時世界的にも最高の爆撃照準器「ノルデン」のことも伺いました。 被弾して機を捨てる場合には、真っ先に拳銃で撃って破壊したそうです。 この照準器は精密光学計器で、爆撃手が爆撃高度、目標の標高、気圧、気温、投下角度、速度、偏流風向(横風)等を基に設定器を設定し、光学系で攻撃目標を確認、投下爆弾数、着弾点までの距離を決めて投下し、着弾所要時間と着弾精度を計測記録して、着弾精度の向上を図っていた、とのことで、我が軍の爆撃機の照準器より遥かに精密な機器であることと、その他の装備も充実していることを知り「空の要塞」と呼ばれる所以がわかりました。
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