潜水艦の攻撃平成16年1月9日配信 |
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司令部における作戦会議から帰隊した隊長から集合命令がありました。 『隊長』 本日の司令部のおける作戦会議の模様と、当隊に対する検討課題を伝える。 米軍機による本土焦土作戦と平行し、米軍は着々と本土上陸作戦(ダウンフォ−ル作戦)を準備している模様である。 関東方面に対する米軍の上陸作戦を「コロネット作戦」と命名していることは皆も承知していると思うが、地形から判断して軍の上層部は、上陸用舟艇を浜に近接させることが容易である千葉県九十九里を第一番の上陸地点として考えている。 当然そのことは米軍側も察知しており、B-29による空撮及び潜水艦による偵察を繰り返している。 潜水艦は、潜望鏡深度での偵察にとどまらず、夕暮れどきになると、浜から10km程度の位置から艦砲射撃を連日のように行なっているとのことである。 潜水艦に搭載している大砲の射程距離、攻撃効果から勘案すれば、これらの射撃は明らかに「いやがらせ」であって、我が方の軍事施設に対する攻撃とは相違するものである。 彼の地に点在する町や村の民間人に対する攻撃は、明らかに「殺意」によるものであって戦争行為とは言いがたく、射撃命令をくだしている艦長の品性は至って下劣であり、軍人の風上にもおけない。 この事は、逃げ惑う民間人に対して機銃掃射を浴びせる米軍戦闘機の操縦士にも言える事柄である。 海軍は哨戒機及び哨戒艇を動員して探索しているが、その所在を掴むことができない状況から、当隊に潜水艦の位置探索方法を検討して欲しい、と海軍側から司令部に対し要請があった。 過日の海軍機の先導方法から勘案すると、良い作戦案を策定できるものと本官は考える。 作戦計画を明日の午前中までに作成することとし、午後司令部へ提出することを約束してきた。 性急な命令であることは承知のうえであるが、彼の地の住民の命を救うと思い努力して欲しい。以上。 『T曹長』 海軍側から見込まれた上での要請とあらば、一肌脱ごうじゃないか。 『通信少尉』 自分の憶測ではあるが、今まで米軍の潜水艦は被弾して脱出した米軍機搭乗員を救出するために房総沖周辺に待機していたが、被弾した米軍機の救出に必要な現在地の情報は無線連絡により確認していたことと思われる。 従って、位置情報の座標数値は、潜水艦も米軍機と同一のものであると考える。 救出専門と敵情偵察と別個の座標系を使用しているとは考えられない。 潜水艦の無線は長波を使用しているが、それがモ−ルスか、A3(無線電話)かは判然としない。 しかし、予備受信機を動員して傍受すれば、潜水艦基地との交信または僚艦との交信をワッチ(受信)することが可能であると思う。 座標数値さえ判明すれば、潜水艦の現在地を容易に確認できる。 なお、付言すれば、水は短波の電磁波を吸収する性質があるので、潜水艦は長波を使用するが、水面下約15mぐらいしか届かないと思う、交信中は、概ね潜望鏡深度であると思われるので、上空からの哨戒は容易であると考えられる。 さすが、米軍の位置情報を検索する方法を考えた通信少尉は目の付け所が違いました。 早速その日の夕刻、作戦計画をまとめて、通信室長とT曹長が隊長に計画案を提案しました。 『隊長』 ご苦労であった。直ぐに司令部へ報告する。 計画どおり、傍受体制を作って実行せよ。 なお、敵艦を捕捉するまでは当隊が責任を持つこととする。 T曹長機はいつでも出撃できるよう待機せよ。 なお作戦遂行上、海軍側との連携については、緊急を要することも充分考えられることから、司令部には事後報告となることもあり得ることについて了承を得ておく。 T曹長が整備軍曹に対し「燃料マンタン、37o機関砲の弾を充分に装填するよう」と指示しました。曹長は発見しだい攻撃する決意のようです。 4台の受信機で潜水艦の通信を検波しました。 米軍機の使用周波数はほぼ掴んでいましたが、潜水艦は初めてです。モ−ルス受信と無線電話受信をそれぞれ2名づつ配置し、その日は徹宵で傍受しました。 が、成功しませんでした。 翌日の昼過ぎ、和訳担当兵が、「九十九里」の単語の入った無線電話を傍受することに成功しました。 制海権を握っている安心感からでしょうか、捕捉した通信は、生文で僚艦と連絡をしているものでした。 東経141度、北緯34度付近の座標○○の位置と、東経139度、北緯33度付近の座標○○の位置(八丈島の西、約100km)であることが分かりました。 おそらく夕暮れを待って、北の位置を航行する艦が九十九里沖に達するものと思われます。 隊長にそのことを報告、私達は出撃しました。 私が「敵潜水艦の南から回り込み、後をつけましょう」とT曹長に言いますと、T曹長は「よしわかった。三宅島あたりを高高度で旋回しながら待機する。潜望鏡は死角が多いから、上空の我が機は発見できないだろう」 基地に対して、次の交信を逃がさないようにワッチするよう連絡をいれました。 付近は米軍機の哨戒も厳重にする必要があるので気が抜けません。 しかし基地から連絡が入りません。 時間が経過するにつれ、私が苛立っていることをT曹長が察知したのでしょう。 「せいては事を仕損じると言うだろう。ゆっくり待とうじゃないか」と諭されました。 すると突然、基地から「白子海岸の南、約100km、座標○○」と、怒鳴るような声で通報がありました。 「よし、行くぞ、汚い戦術を使う相手には、情けは無用だ」 今日の曹長は人が変わったように見えました。 双眼鏡で観ると潜望鏡深度で一隻の潜水艦が北に向かっています。 基地に対し、「敵潜発見、座標○○」と通報を入れました。 黄昏どきで西日がやけに眩しく双眼鏡のレンズに反射します。 敵潜は海岸線から50Kmほど離れた沖合いを北北西に航行しています。 気づかれないように、後方を1,000mの高度で旋回しながら追尾しましたが、相手は気がついていないようです。 基地から「海軍の魚雷艇が出動した。見逃さないように監視せよ」と通報があり、「了解」と返電していると、潜水艦が陸に向かって針路を変え、海岸から10kmぐらい離れた沖合いで浮上し始めました。 完全に浮上したところを、艦尾のスクリュウ付近と潜望鏡を目掛けて機関砲を斉射。直ぐに急反転して艦橋を狙い撃ちしましたが、相手にとっては運悪く、それは艦橋のハッチを開けたときでした。 我が機がつけていることを全く知らなかったのでしょうか、慌ててハッチを閉めようとしますが、壊れた潜望鏡の破片が挟まったようです。 急速潜行していますが、艦橋が水面まで沈んだとき気泡がブクブク出ています。 それを見て曹長が、 「ハッチが完全に閉まらないようだ。再び浮上するから、大砲と高角砲の位置を確認せよ」 潜水艦はほどなく浮上しました。 そこを狙って、先ず大砲を、反転して高角砲を狙い撃ちしましたが、敵潜水艦は手も足も出せない状態です。 甲板のハッチが開き2.3人の水兵が高角砲の砲身カバ−を開けようとするところを狙い撃ちました。 水兵が海に転げ落ちるのが見えましたが、砲は使いものにならないほど大破しています。 最初に撃った大砲にも数発の弾が当たっていると思われますので、反撃してくるとすれば、小銃しかありません。 状況を詳細に基地へ通報しましたが、海軍の魚雷艇はまだ到着しません。 甲板のハッチから自動小銃を持った水兵が現れ撃ってきましたが、低空を高速で飛行する我が機に立ち向かうには、一丁や二丁の小銃では到底歯が立ちません。 曹長が「そっちが未だやる気なら、トコトンやるぞ」と言うなり斉射をかけ、何人かの兵が海に落ちました。 艦橋の壊れたハッチが開いたので、そこを目掛けて狙い撃ちをかけましたが、暫くして白いものを振りながら1人がでてきました。 多分艦長でしょう。どうやらギブアップしたようです。 基地へそのことを通報するとともに、敵潜水艦は降伏したので魚雷攻撃をしないよう海軍側へ連絡するよう、あわせて依頼しました。 空での戦いは何度も経験しましたが、対潜水艦はこれが最初で最後の経験でした。
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