特攻機の先導(2)平成16年1月2日配信 |
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隊長から特攻出撃の先導と戦果確認の重要命令が伝達された翌日、海軍側から詳細な連携戦術についての検討と打ち合わせのため、海軍将校が2人来隊されました。 「海軍大尉」 過日の硫黄島攻撃に際しては、適切な先導をしていただき、大きな戦果をあげることができました。 今回は広い太平洋上における一点を捕捉する必要があり、電探で捉えたものは、プラス、マイナスの幅が大きいため、特定の場所を的確に捉えるのは至難です。 ご存知かと思いますが、特攻機は最大の爆弾積載をする関係から、必然的に燃料の搭載と機銃弾の装填は必要最低限に抑えています。 従いまして、ようやく敵艦を発見しても、米軍戦闘機の迎撃により任務を遂行できない、或いは、後、数十キロで燃料切れになることがあります。 貴隊の先導機が敵機に発見されず、しかも的確に目標の米軍機動部隊の位置まで先導していただければ、本来の任務を完全に遂行することが可能であると確信します。 「隊長」 特攻作戦とは、戦術的には止むに止まれない究極的なものであると本官は解釈しているものの、割り切れないものが残る。 多勢に無勢の現時点においては、他の戦術は考えられないとは思うが、真っ向勝負で意気盛んな戦法は、本官個人としては賛成しがたいところである。 しかし、貴官たちの部下が勇躍して死地に望む決意に対しては敬意を表したい。任務が完全に成功するよう祈るばかりである。 「海軍大尉」 ありがとうございます、期待に答えられるように努力いたします。 出撃時の集合地点、高度と巡航速度、無線周波数と目標地点までの発信は封鎖すること。 ならびに、当隊作成の座標を表示した地図の見方など、詳細にわたり事前の打ち合わせを行いました。 なお、米軍空母から艦載機が発艦後、北緯33度付近(伊豆諸島の青ヶ島)の西方を通過する頃に、我が方は房総沖で合流することを決定しました。 従って、米軍艦隊と米軍機の交信内容を的確に捉え、時期を失することがないようにしなければなりません。 米軍機が空襲完了後に帰投する母艦が撃沈、または航空甲板が大きく損傷していた場合、着艦は不可能となります。 一石二鳥の戦術を採るためには、時間経過を確実に把握することが先決です。 翌日まだ薄暗い朝、和訳担当兵の「米軍機が発艦するようです」との大きな声。 即、隊長から司令部へ伝達。 私たちも離陸に備え、時間が経過するのを待ちました。 米軍機の全機が発艦したのちに出撃するのが望ましいからです。 しかし、待っている間の時間経過は凄く遅く感じられました。 基地全員の「ガンバレ」の声に励まされ、一路、海軍機との合流地点へ向かいました。 後は、運にまかせるのみです。当初計画した作戦に沿って実行あるのみです。 「特攻隊員たちは今ごろ、どんな気持ちで操縦悍を握っているのだろうか」と考えているうちに、合流地点に達しました。 「彗星」の9機が3機づつの編隊を組んで飛行しています。 「T曹長」 わが機が先導する。 予定された経路を座標どおりに我が機の後方約50Kmを追尾されたい。 に対し、隊長機から「了解」と、頼もしげな声が返ってきました。 編隊の最後部の機と平行して飛行しながら挙手の敬礼をしましたが、にこっと笑いながら答礼が返ってきたので、思わず胸がジ−ンとしました。 一機、一機に対して別れの挨拶をしましたが、戦争とはいいながらも前途有望な20才前後の若者がどうして死に急がなければならないのか? この疑問は解けませんでした。 この艦上爆撃機「彗星」に搭載された液冷の「熱田」エンジンは不調をきたすことが多かったので、空冷エンジンを装備した変形型を設計し、これを「彗星」三三型として海軍は採用していました。 これにより、性能は若干低下したものの稼働率が向上し、作戦遂行に必要な機数を揃えられるようになりました。空冷型エンジン搭載型には後部座席を廃し、爆弾倉に800kg爆弾1発を搭載する能力を備えた四三型も製作されています。 この機体は帰投方位測定装置や後方旋回銃の廃止など装備が簡略化されましたが、逆に操縦席の防弾装備は充実されており、さながら特攻専用機の様相を示していました。 米軍機動部隊の現在地の南から高度を上げ、双眼鏡で見渡すと大機動部隊です。 エセックス級一隻、ヨ−クタウン級二隻、の空母と護衛の重巡洋艦、駆逐艦など総勢10隻はあるでしょうか。 このまま日本本土を急襲してきた場合を想定すると、果たしてどのような結果となるでしょうか。 特攻機の隊長に対して、「座標数値〇〇、敵機動部隊発見、我は高空で確認する。突入されたし」と無線連絡をいれますと、折り返して「先導を感謝する、無事帰投されたい」 技術担当兵自作の可搬無線機を海軍の周波数(A3無線電話)に合わし、基地との交信は短波を使い、機動部隊の規模の連絡、特攻機の突入を通報しました。 海軍基地でも傍受していることと思われました。 隊長機から。 「目標、空母3。全機我に続け」 の命令とともに全機が超低空で一列縦隊で突っ込みました。 高射機関砲の的を小さくするためです。 隊長機が空母の艦橋を狙って突っ込んでいます。 艦の中枢を攻撃するようでした。 途中撃たれてエンジン部分から火がでましたが、そのまま真っ直ぐ艦橋に激突。 大爆発をした直後、無線機のレシ−バ−に「ウォ−」との叫び声のあと、「お母さん!」あとは無音です。 一機が甲板を突き破っていました、爆弾は特殊な信管で、突き抜けてから爆発するのですが、火柱とドス黒い煙があがり、まるで地獄絵図です。 「3番機〇〇機突入する」 空母の機関室と思われる後尾の横腹へ突っ込みました。 「天皇陛下万歳」の声も聞こえましたが、「お母さん」の声が頭にこびりつきました。 つぎつぎと入る無線を聞きながら基地へ戦況と戦果を逐一報告しました。 つい先程、笑いながら敬礼をしてくれた若い搭乗員は既にいません。 涙が頬を伝い、電鍵を打つのが途切れ勝ちでした。 9機のうち1機だけはポムポム砲の斉射により撃墜され、残念でしたが、空母3隻を大破、または、航行不能とする戦果がありました。 『戦争とは、食うか食われるか、殺すか、殺されるかですが、特攻攻撃を目の当たりにして、このような悲惨な戦いを誰が命令したのか。』 『命令した者は、果たして特攻精神を持っているのだろうか』 このような、話をT曹長と交わしましたが、あの、残酷非情な光景は二度と経験したくないと痛感しました。 (※)突入する「彗星」の画像↓ http://chie.okigunnji.com/t/tokkoutotunyuu/tokkoutotunyuu.htm (※)「彗星」の画像↓ http://chie.okigunnji.com/s/suisei/suisei.htm
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