特攻機の先導(1)平成15年12月26日配信 |
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隊長から 『我が隊が作成した作戦計画に基づき、海軍機が特攻出撃することとなった。 海軍特攻機を先導するル−ト及び出撃時期についての詳細を明日中に作成せよ。 作戦計画に参加する者は、通信室長、通信少尉、T曹長、N軍曹、通信軍曹、和訳担当の古参兵とM伍長の7名とする。 過日の硫黄島攻撃の経験を充分生かして、万遺漏なきように、慎重を期して取り組むこと。以上』 責任重大です。 先導ル−トもさることながら、最小のリスクで最大の効果を上げられる戦術を考えなければなりませんが、時間的な余裕はありません。 早速、命令を受けた7名が集まり検討することとなりました。 『通信室長』 司令部の情報によれば、空母2.3隻を含む大機動部隊であることから勘案すると、真正面からの攻撃では戦果を納めることは、至難であると思われる。 硫黄島攻撃の成功は米軍作戦の裏を描いたことが大きく起因している。 従って、今回も米軍の戦術を読み取りその裏を描く方策を考える必要がある。 『和訳担当兵』 米軍の艦載機は、出撃以外でも機種にかかわらず発着艦(タッチアンドゴウ)の訓練を行っていることが、交信内容から容易に判断できます。 空母に着艦する前には、必ず空母の現在地を座標数値で訓練飛行中の機に連絡していますので、その数値から地図上で機動部隊の現在位置を把握することができます。 『T曹長』 米軍機動部隊の現在地は、関東および関西地方に対して攻撃を行なう場合に最短コ−スとなる東経138度、北緯27度の座標○○(父島の西、約500Km)にあると思料される。 詳細な地点については、和訳担当兵が傍受した米軍座標により、正確な位置を把握することができる。発着艦の訓練は昼間よりも難しい夜間に訓練の重点をおいて実施していると思われる。 訓練時に交信する内容の傍受は、夜間2名配置の体制で検波する要がある。 当隊作成の座標数値を記載した図表に米軍の座標数値を書き込み、同じ図表を海軍側も携行すれば、先導は容易であると考えるが、過日の硫黄島攻撃で苦い経験をした米軍は哨戒機を増備し、海空にわたり厳重な哨戒網を展開していると思う。 途中で米軍の戦闘機に遭遇した場合、特攻機は爆弾を満載しているため、空戦では勝ち目がなく、目標到達は至難である。 従って、目標までの飛行経路がこの作戦の成否を握っていると考える。 『私』 硫黄島の攻撃では米軍の哨戒空域が比較的手薄であった東経150度を南下しましたが、米軍はその教訓を生かすため、その後は西側から襲ってくるものと推測し、哨戒の眼は東経140度付近に重点をおいていると考えます。 我が方は米軍の作戦の裏を描いて、再び前回と同じ経路を南下し、米軍機動部隊が位置すると思われる北緯30度、座標○○から東の線上に達したのち、更に約50Km南下し、西へ45度、方位を転換、目標の南約50Kmから北へ45度方位を変え超低空で飛行すれば、米軍が重点的に哨戒していると思われる北方向とは逆の方向になりますので、成功する率は高いと推量します。 ただ、訓練中の艦載機に発見された場合でも、機銃に搭載している弾は必要最小限であると考えますので、空戦にも対抗できるものと思います。 なお、効果的な戦果を期待する本作戦では、艦載機のほぼ全機がB-29の護衛または艦載機が本土空襲の為に発艦した後に、攻撃すれば本土空襲後に帰投不可能となることが、想定されます。 米軍の交信状況を迅速に把握するとともに、時間経過から敵機の位置を的確に類推することが、本作戦の鍵であると考えます。 また、作戦終了後における先導機の燃料補給地も考慮しておく必要があります。 概略、以上の検討結果に基づき、出撃ル−トの選定とその理由、最も効果的と思われる出撃時期等を箇条書きにして、通信室長とT曹長が隊長に具申しました。 翌日、隊長から集合命令があり。 『司令部における海軍側との作戦会議の結果は次のとおりである。 当隊が策定した作戦計画に基づき決行する。 攻撃機は艦上爆撃機「彗星」(注)9機とする。 出撃基地は「木更津」とする。 出撃時期は当隊が米軍無線を傍受した結果に基づき海軍側が決定することとする。 以上であるが、李司令官から、「僅か一日の間に計画を策定したことはご苦労であった。小田原評定になることを危惧していたが、徒労であった。計画に参画した者から1.2名を司令部へ転属させたいぐらいだ。労苦に感謝していたと伝えてくれ」とのお言葉があったので付言しておく』 計画は決定されましたが、果たして私達が書いた青写真のとおりの成功を納めることができるかが大きな課題となりました。 (つづく) (注)「彗星」の画像をHPにアップしております↓ http://chie.okigunnji.com/s/suisei/suisei.htm
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