総合的な作戦平成15年12月12日配信 |
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太平洋戦争で日本は米国に物量の格差で敗れたと言われていますが、ハ−ド 面の物量だけでなく、ソフト面の情報においても日本は米国に完全に敗れてい たと言っても過言ではありません。 日本が完敗し米国が大勝を博した典型的な例が、ミッドウェイ海戦(1942. 6.5)でした。日本軍機動部隊の南雲艦隊は、当時、源田艦隊と揶揄されてい たそうですが、源田実航空参謀(戦後、航空自衛隊の幕僚長を務め、その後、 参院議員となる)の発言力が大きかったようです。 インド洋作戦までは相手英国の戦闘能力のせいもあり、南雲司令部の判断は、 参謀連が集まって協議した結果について、司令官が唯々諾々とその方針に従っていても勝利を治めることが出来ました。 しかし、ミッドウェイ作戦では強い米国機動部隊には通用せず、司令部組織 の欠陥がモロに出てしまう結果となりました。 米国海軍は日本側の暗号通信を完全に解読、日本軍の作戦計画の全容を事前 に知り尽くし、待ち伏せ攻撃をかけましたが、日本軍の方は米軍の所在すら掴 むことができないまま猛進し、その結果、航空母艦四隻、巡洋艦一隻が撃沈。 320機を超える飛行機を失いました。 なによりも、熟練したパイロットや整備員を含む3,500名を超える兵士を失った ことが最大の痛手でした。 空戦は次々と的確な判断を下す必要があり、司令官の陣頭指揮が非常に重大 なのですが、南雲司令部はそのような体制にはなっていなかった為、俗にいう、 「船頭が多すぎて船が沈む」たとえのとおりの結末になったことは否めないと 思います。 飛行機は量産できますが、熟練したパイロットを養成するためには、長い年月 をかけなければ育成することが出来ないのです。 因みに、訓練教育隊でよく聞かされた言葉に『貴様たちの命は一銭5厘でい くらでも代わりがある』(召集令状の昔の葉書代)でした。 米軍はなによりも兵隊の命を大事にしましたが、日本軍上層部の考えかたは、 「兵隊とは消耗品」であって、兵隊の命(ソフト)よりも大事なものは、武器 (ハ−ド)だったのです。 しかし、全ての部隊がそうであったわけではありません。 「はなし」の第32話『隊長の訓示』のなかでふれましたが、【本官が言わんとする趣旨を充分肝に銘じ、命令の如何を問わず国家と国民を 死守するために奮闘努力を惜しまないでもらいたい。本官が言外に言わんとすることがらがどのようなことなのかの判断は、貴様たちひとり一人の胸の内で 考えよ】とは、 命令に忠実であることは、勿論であるが、「先ず、命を大切にしろ」との教えだったのです。 制空権および制海権を失った昭和20年の春頃から、本土防衛作戦が計画され ましたが、既存部隊の編成替えによる防衛体制の構築に主眼がおかれ、米軍の 動向をつぶさに探索するための情報戦略および指揮命令の一元性、ならびに横 の組織の連携強調などについては、充分であるとは思えませんでした。 危機管理の重要性は現在でも最も重要なことですが、戦争は最大の危機管理 能力を必要とし、指揮命令系統の欠陥が、即、敗戦に繋がります。 私たちの部隊が独自に行う米軍の動向を探知する情報により、索敵機が出撃 し遥か南方の洋上で、司令部からの索敵命令を聞く事態が度重なるごとに、情 報伝達が遅きに失することを痛感していました。 ある日、T曹長に相談しました。 「敵機動部隊および米軍機の動向を早期に捕捉し、且つ迅速に関係部隊に対す る情報伝達を行う体制を早期に整備しなければいけません。現在のように、縦 組織のみに頼る情報把握と伝達体制では、本土防衛作戦は絵に描いた餅になる と思います。 従いまして、例えばレ−ダ−部隊、米軍の暗号解析部隊および偵察飛行部隊 の組織を一つに統合し、情報の共有と一元化を図る必要があることを痛感しま す」 T曹長。 「その事は以前からわかっていた。隊長にも進言し、司令部の作戦会議に於い て隊長が提案したそうであるが、組織を大きく変更することは困難であるとの 理由で否決されたそうである。隊長のように迅速果敢に行動を起こす参謀連ば かりであれば、容易に実現していたであろう。 だから、司令部の命令を待たずに『本官が全責任をとるから、命令を待たず に行動せよ』といつも言われているのだ」と、答えが返ってきました。 話は変わりますが、日露戦争の日本海海戦の時、最後は東郷司令長官が陣頭 指揮を取り、東郷司令部は、いざ、と言うときに司令長官が陣頭指揮をとる体 制が整っていたから勝利したのだと思います。 また、阪神・淡路大震災の折、危機管理能力の欠如により、いたずらに被害 が拡大しましたが、大震災という国家的な危機に遭遇して初めて、当時の政権 政党の脆弱性を露呈しました。 さる、9月1日の「防災の日」に各地で総合防災訓練が実施されましたが、自 衛隊、警察、消防の三味一体の訓練については、整合を図るのは難しい問題が あると聞きました。 それは、従来から警察、消防関係は、被害地の特定については、各市町村とも 住所(○○市☆☆町◇丁目××番地)で、管理されていますが、自衛隊は、G IS(世界測地系地理情報システム)により地理的な位置を迅速に把握する設 備を持っており、即、整合を図ることは難しいようです。 GISは、さきの阪神・淡路大震災の反省を機として政府が本格的に取り組み を始めましたが、全国的に導入されるまでにはまだ時間がかかるようです。 組織の連携および情報の共有一元化を図るため、克服しなければならない事柄 は多岐にわたり山積していると思われますが、平和な時代でこそ有事を真剣に 考えることが、肝要であると思います。
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