米軍機との偽の交信平成16年11月22日配信 |
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通信所に新しく無線機材が配備され、また前の隊で空襲により土埃を被った機材の中から、再利用できそうなものを搬入して、一応は以前の作戦を再開できるようになりました。 ただ、転属組だけで勤務体制を組むことに対しては、既存の兵隊との協調体制に問題があるとして、森田隊長(以下M隊長といいます)から平岡少尉に対し、「勤務の編成を速やかに行なうよう」との指示がありました。 24時間体制ですから、技倆の軽重を判断し、上手く編成を組まないと満足な作戦を遂行することができません。少尉は苦労したそうです。 F軍曹が、他所からきた若造連中に自分の城を牛耳られていることにかなりむくれていることを私は察知していましたが、我れ関せずを通していました。 和訳担当一等兵の大きな声が響きました。 「硫黄島を離陸し、母艦へ帰投する米軍機の交信を傍受しました」 私 「硫黄島へ緊急着陸した艦載機が、修理を終えて帰投するところだろう。 交信に割り込んで、帰投する母艦の位置を探策しろ」 F軍曹が「そんなことをできる筈がない。やれるものならやってみろ!」と高圧的に怒鳴るように言いましたので私が、「「できる」か「できない」かは、結果を見てから言っていただきたい」と反論しましたところ、顔を真っ赤にして「・・・・」 米軍機の交信に割り込んだ和訳担当兵が 「こちら、テニアン第58戦隊通信隊、硫黄島へどうして緊急着陸したのか」と言い、別の和訳担当兵が同時通訳で翻訳しました。 そうすると米軍機から 「着艦フック故障で修理のためだ」と返ってきました。 和訳担当兵。 「母艦までの距離は遠いのか?また、母艦は何型クラスか?」 米軍機。 「約300Kだ。エセックスクラスの母艦を呼び出しているが応答がない」 和訳担当兵。 「座標数値がわかれば、無線が通じなくとも大丈夫だ」 米軍機。 「座標は○○だ」 米軍機の座標数値表を見ながら和訳担当兵が 「了解、母艦の位置は、東経○○度○分、北緯○○度○分だ、針路を間違えないよう帰投せよ」と言いますと、 米軍機から 「サンキュウ、グッバイ」 と返り、何事もなかったかのように交信が終了しました。 この様子を見ていたF軍曹は、ただ呆然と突っ立っていました。 それを見て私が「先ほどからの交信を聞いていて何を感じましたか?」と尋ねますと。 「貴様たちは、到底考えられないことをやるな!その方法は誰に教えてもらったんだ?」と、聞きますので。 「私たちが考えた米軍機の交信に割り込む方法ですが、誰でもできることではありません。英語でも地域により多少とも抑揚が違いますので、相手が不信感を持たないように合わすことが重要です」 「そこで、F軍曹殿、今の交信内容から類推したことを隊長に報告されてはいかがですか?」 少し、イビッテやろうと思いました。 F軍曹は「何を報告するんだ?」 メグリの悪い、タダメシを食ってきた証拠です。 私。 「空母エセックスクラスと言えば、満載総排水量34,500トン、搭載艦載機は80機〜100機の大型空母です。従って、大機動部隊であることが分かります。なお、先ほど米軍機が無線電話で告げた座標数値は、おそらく硫黄島へ着陸寸前の情報であると推測できます。 修理に要した時間経過をおよそ2時間と推定すると、現在の母艦の位置は針路にもよりますが、もし北に向かっているとすれば、北緯○○度であると推量でき、機動部隊が北上しているということは、B-29の護衛のためであると類推できます。 従って、B-29がマリアナの基地をいつ発進するかを、傍受する必要があるということです」 F軍曹。 「・・・・」 私は、着任時に「少年兵か」と蔑まれたことが忘れられず、 「只今、少尉殿もF曹長殿も公用で外出中ですから、上級者と言えば軍曹殿です。隊長にこのことを報告する義務があるでしょう」 F軍曹。 「貴様、この俺をいびるのか!」 かなり激昂しています。 私は腹の中で、「「メンコ」で任務を遂行できない者は我が隊には必要ない」と苦笑していました。 いきなりビンタが飛んできましたので、顔は痛たそうにして倒れたところへ、F曹長が帰隊してきました。 曹長から「どうしたのか?」と聞かれましたので、先ほどからの経緯を説明したところ、 F曹長は 「分かった。傍受した内容から推測される米機動部隊の位置を貴様から隊長に直ぐ報告に行け」 隊長から司令部に詳細を報告されましたが、司令部からは「B-29の発進を探索せよ」との命令がありました。 通信室に帰ってくると、F軍曹が板の間で気絶しています。 ただならぬ気配にビックリし、上等兵に「どうしたのか?」と尋ねますと、 曹長がF軍曹に、「貴様、タダメシを食うばかりが能じゃないぞ」と、言ったところ、「タダメシとはなんだ」とF軍曹が曹長に食ってかかったらしいのです。そこで曹長が「言ってわからんヤツはこうなるんだ」と言うなり、背負い投げで板の間に投げつけ、軍曹は気絶したとのことです。 益々、険悪な状況です。 敵は米軍である筈ですが、内輪で戦争状態となってしまいました。 (つづく)
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